つながる、地球・くらし

KKEの現場レポート

産業廃棄物処理への貢献

香川県直島環境センター

明るい未来を目指して着実に進む島

「直島」は瀬戸内海にある島です。古くから海運業や製塩業の島として栄えてきましたが、1900年代初期には銅などの貴金属の製錬を主な産業としてきました。
現在では現代美術の島として観光リゾート地としての開発も進み海外からも注目される人気の島です。
そしてそのお隣には「豊島」。1990年代に産業廃棄物の不法投棄が発覚し、社会問題となりました。
廃棄物の上に雨が降れば、汚染された水となって土壌を汚すだけでなく、海に流れ込めば周囲の海岸や海水にも影響を与えることになります。
この豊島の不法投棄廃棄物を処理するために、2003年に「香川県直島環境センター」が建設されました。
廃棄物は、掘り起こし、トラックに乗せられ、そして専用フェリーで直島へと運ばれ「香川県直島環境センター」で処理されます。
一方、豊島では、廃棄物によって汚染された水が島の外へ流れ出さないように、綺麗にしてから海に戻すための「高度排水処理施設」も建設されました。
どちらも目の前の大量の廃棄物と真摯に向き合い、過去の負の遺産を清算し、未来へきちんと繋げて行くという、実力と責任が要求される現場です。

種々雑多な豊島の廃棄物

豊島の採掘現場のすぐとなりにある高度排水処理施設

瀬戸内海に浮かぶ直島

産業廃棄物を処理する直島環境センター

不適正処理というツケ

「ごみ処理は短期間でイイカゲンな処理をするとツケが回って来る。」という概念があるそうです。豊島に不法に投棄された産業廃棄物もこうした高度成長時代の不適切な対応が生んだ悲しいツケ、しかもあまりにも大きな負の遺産になってしまったのかも知れません。
この豊島問題等がきっかけとなり、廃棄物処理の考え方や各種リサイクルに関する法の整備が進み、社会全体が未来に向かう取り組みに目を向かせることにもなりました。
「もともと溶融炉の研究開発をする部署にいて、溶融炉が果たす役割やクリアしなければならないことを検討していました。だからこの豊島の問題は、会社がこの事業を受注する前から気になっていました。」
と後藤総括所長。
「この問題にクボタの回転式表面溶融技術を活かすことができ、社会貢献できる、ということでこの事業には以前から携わりたいと思っていました。」

豊島の産業廃棄物

トラックには専用の船で直島に運ばれます

この施設にはいろいろな方が見学に来られますと後藤総括所長

社会が注目する緊張の現場

実際に現場に入って思ったことを聞いてみると、
「こんなものが埋まっていていいのか!と強く感じました。」
と一言。適正に処理をすることの重要性を改めて認識したそうです。また実際の業務では、
「注目を受けている事業なので、些細な不具合でも、各方面に対して速やかに内容を納得していただけるようにわかりやすく説明する責任・義務や、実際の応急対策、恒久対策など次々と打ち出して実行していかなければならないなど、いろいろ厳しさを感じたというのが実感です。」
香川県もこの事業については、県政の最重要課題のひとつとして、「環境と安全への配慮」と「循環の実現」と「情報の公開」を徹底して、処理の完了を目指していく、としています。
「社会と向かいあった廃棄物処理をしているという意識は常にありますね。」
注目を浴びた事業なので、外部の組織や団体などとのやり取りの中で注目度の高さを感じるそうですが、所内のスタッフにそうした状況を常に伝え、緊張感やモチベーションを保つことが重要だそうです。

豊島からの運ばれて来た廃棄物を受け入れます

大きな施設ですが、24時間、常時隅々まで監視しています。

クレーンで溶融の前処理工程へ

廃棄物は主に燃えるものと燃えないものに分別され、燃えるものは破砕機で砕きます

溶融炉を止めないという努力

隣に見える豊島には気の遠くなるような量の廃棄物が埋まっていて、毎日毎日トラックに積まれ、船で運び込まれてきます。そうした現実に向き合うとき、ここでは日々の運転の中で「溶融炉を止めない(処理をし続ける)」ということが、豊島の不法投棄廃棄物を未来へ残さないという目的を達成するためのとても重要な目標になるそうです。
「年間の処理日数や処理量を増加させてきています。増加要因ですか?日々の努力の積み重ねです。何を優先して点検するべきか、故障発生に備えて何を準備してどう処置するべきか、どうすれば緊張感を持続できるか、溶融炉を止めないためにやるべきことを考えて実行してきた結果です。」
トラブルや異常の原因がなかなかわからない時なども、繰り返し何度も現場を見ながら考えているとひょんなことから解決の糸口が見つかったりするそうです。
「そういうのがわかって、処置した後でピタッと解決すると、とても喜びを感じます。」
一般の製造業が必要な材料を調達して、製品を製造する「動脈系」だとすると、何が入っているかわからないごみという材料を処理するのは「静脈系」。様々な知識や柔軟な対応力が求められる現場です。
「プラントでは電気、機械、建築など様々な専門分野のいろいろなことが関わっていて、この中では学ぶことは多いんです。現物を見ながら、取扱説明書を読むだけでも勉強になります。日々の過ごし方によって自分自身の成長の仕方が大きく変わってくると思います。現在35名のスタッフにはできるだけそうした取り組みをして『楽しさ』を見つけてほしいと話をしています。」

炉の中から、オレンジ色の力強い光がこぼれます。

運ばれてくる廃棄物はあらかじめ溶融のテストをします

常に五感を働かせての点検

取材している間も定期的に運ばれてくる廃棄物。延々と続く作業です。

島という環境

もともと研究開発で関わっていた豊島、直島ですが、現場にやって来たのは?
「試運転の時からです。で、完成してから一緒にいた連中は一人抜け、二人抜け、気がついたら私だけが残ってたって感じですよ。」といいながらも何となくうれしそうな笑顔。
「こういう環境だから緊急の対応のこととかしっかりしなければと思います。」
やはり買い物や食事などなんでもそろっている街の生活とは違い、それなりに不便なところも感じているようですが、おいしいうどん屋さんがあってそこはお気に入りとのこと。
「コンビニとかも最近できたところですし・・・」
と言いながらもやはり朗らかな笑顔。
フェリーから見える豊島を指差して「だんだんと処理も進んで、囲いがあったんですけど、それもだんだん低くなっていたりするんですよ。」
現場からちょっと離れて、確実に少しずつ向かっている未来が見える場所なのかも知れません。

暮らしの話を伺うと
島への愛着を感じました。