つながる、地球・くらし

KKEの現場レポート

寒さ厳しい北海道の 美しい大自然とともに(1)

弟子屈町役場弟子屈浄化センター |標茶町標茶終末処理場

貴重な自然と向き合う暮らしを支える

広大な自然を誇る北海道の東部、網走と釧路の中間あたりに弟子屈(てしかが)町と標茶(しべちゃ)町があります。透明度の高い摩周湖、カルデラ湖として有名な屈斜路湖とそれを源とする釧路川。その流域にはタンチョウなどの水鳥をはじめ、多くの野生生物の貴重な生息地となっている日本最大といわれる釧路湿原(国立公園)があります。「テシカガ」はアイヌ語で釧路川の「岩盤の上」、「シベチャ」は「大きな川のほとり」。くらしが自然とともにあることを象徴しているようです。
それぞれの町の生活排水を処理する施設では、この貴重な自然と向き合って、毎日休まず暮らしから出た汚れた水をきれいにして自然に還す仕事をしています。

弟子屈町役場弟子屈浄化センター

この地域の源流となる屈斜路湖は水質がとてもきれいで、釧路川から釧路湿原、そして海へと続く広大な地域の魚や水鳥、植物などの命を支えています。暮らしはこの恵みの水をいただき、汚れた水はこの施設に集められきれいな水に生まれかわります。
ここではたくさんの貯水池やタンク、パイプに囲まれて水質管理と電気メーター、各種ポンプ場などの点検業務が主な日課です。
「処理した水は釧路川に流すんですが、釧路湿原は国立公園で観光地でもあるので、品質にこだわった水作りを心がけてますね。」

暮らしと自然の両方が相手ですから、気候の変化にあわせて様々な調整をして常に安定した水作りをしなければなりません。たとえば雪のときは除雪も大変ですが、雪解け水で水量が増え、処理にもいろいろ影響が出るので対応に追われます。汚水はいろいろな処理をして無色透明なきれいな水にします。でも本当にきれいなのかどうかは中を見ただけではわかりません。もちろん厳しい基準の水質検査はしますが、まず人の感覚でいかに早く見極めるかが迅速な対応の秘訣。
「まずは匂いですよね。まず匂いだけで薬品がだめだとか、水質がどうかとか分かるようになります。ベテランは経験、直感で分かるんです。」
匂いや色を識別する技は日々の努力の賜物なんですね。

美しい自然に負けない美しい水を作り続ける

やっぱり暮らしに水は欠かせないもの。でもそれを当たり前のものと思わずに、暮らしと自然を見据えて維持していくのは難しさもあるし、努力も必要だと話す所長。
「それを挑戦し続ける事が目標でもあり使命だと思うんですよね。大切なのはチームワークです。朝挨拶にしてもその様子で体調を気遣ったり。」
休み時間にいろんなことをザックバランに話す事で意思疎通を図る。ちょっとした事が無事故で安定した運転実績につながります。
処理した水を放水する場所は散歩ができるコースになっていて、住民が気軽に通りかかります。自然に水を還すまさしくその現場を見守られている感じがするそうです。
「会社の名前に恥じない仕事をしなければといつも思います。」
美しい大自然とそこで暮らす人、その両方に優しい水の番人なんですね。

標茶町標茶終末処理場

人口8500人ほどの標茶町。その約7割の下水を毎日処理しています。処理の主役はこの施設と微生物の力と6人の所員。家庭から出た汚れた水をきれいな水にしてから、釧路川に放流します。毎日の仕事は水質検査・管理と、たくさんの機器の操作や点検、それからトラブルがあればその処置などを行っています。
「町から預かっているこの施設をどれだけ大切に扱って長持ちさせるかが課題です。点検の時に機械のいつもと違う些細なことに気づいたりすることが大切なんです。」

標茶町の上水は7℃と温度がかなり低め。家庭からの下水の温度も低くなり微生物の働きが悪くなってしまうことがあります。そんなときは処理に時間をかけて対応します。
「たとえば夏は16時間のところを冬は20時間以上かけたり。この判断は長い間積み重ねてきた経験がものをいいます。」
微生物相手ではこちらの思い通りにならないことが他にもいろいろあるのでは?
「ウチは事業所が日本全国にあるので横のつながりを利用して、対応策などのノウハウやデータの共有をしています。おかげでいい仕事ができますね。」
ほかにも暮らしと自然の両方を相手にする仕事ですから天気、特に台風や雪解け水などもいつも気をつけているそうです。

自然の美しさが当たり前のことであるように

「ここ出身なんです。昔川の水を飲んでいたりしたんですよね。何年もここの自然の景色を四季とともにみていると、前は小高い山に建つ家が見えていたのに木が成長してそれが隠れてしまったり、冬になると枝だけになってまた見えたりと、そういう変わっていく自然を見られる事がいいですね。」
地元出身で結婚をして子供も生まれ、後世に残さなくてはいけないものもある。いい加減な仕事をして川を汚したくはないとゆっくりと語ってくれました。
「最近は子供とキャンプなどもいくようになって。そういうキャンプ場でいっぱい人が集まって流す汚水もきれいにしないといけないんだなっていう実感がわいてきました。 そういうところでこの仕事をしていて良かったのかなと思います。」
人が自然の中で暮らすために、人が自然に感謝しながらしなければならない事がある。と、あらためて強く感じました。