つながる、地球・くらし

KKEの現場レポート

島の水をやさしく、そっと海へ還す

香川県・豊島産業廃棄物等処理施設

豊島(てしま)は周囲20Km弱、人口千人程度の小さな島。小豆島の西3.7kmほどのところにあります。過去この島に投棄された産業廃棄物によって発生する汚染水を浄化をする、高度排水処理施設を訪ねました。

瀬戸内海に浮かぶ小さな島で

この施設で作業するのは2人。毎日お弁当をもってフェリーで島へ通勤します。岡山県の宇野港から
40分。天気の良い日は実に気持のよい通勤時間のように思えますが、これが毎日、そして雨や風の日もということになると、相当な心がまえが必要なのだろうなと思えてきました。フェリーからは豊島で掘削した産業廃棄物そのものを処理する施設がある直島がすぐとなりに見えます。きれいな自然に戻すための取り組みが行われているんだという実感がわいてきます。

産業廃棄物という負の遺産を未来に残さないために

豊島には90数万トンもの産業廃棄物が眠っているといわれています。これを放置すると土壌を汚染し、島の水や海をも汚染することになります。現在この廃棄物は掘削してお隣の直島へ運び焼却・溶融処理。一方の高度排水処理施設では、島から海へと流れ出る汚染水を海岸の遮水壁でせき止め汲み上げ、きれいな水にする処理を行っています。
「海や山はきれいなのがもともと当たり前のことだと思うんです。人のくらしが自然環境を汚したりすることを少しでも減らし、自然環境が悪くならないようにする。できればもとどおりの美しい自然の姿に戻ってほしいというそんな思いです。」

島を通り抜ける大切な水が命をとりもどす瞬間に立ち会う

2003年(平成15年)に建設されたこの高度排水処理施設の試運転のときから、運転管理を行ってきました。日量65トン。汲み上げた水がきちんときれいになっているか、施設や設備に問題は発生していないか。
「こうしたひとつひとつの作業が水をきれいにしていくんです。」
処理された水をコップに注いでみると、産業廃棄物のイメージは全くないキラキラと澄んだ水。
「飲んでも大丈夫なんですよ。よかったらどうぞ。」
かすかにしょっぱいけど、匂いも全くないきれいな水でした。施設内の事務所にある、この水が入れられた水槽では、コイたちが気持ちよさそうに泳ぎ、きれいな水だということを証明してくれています。

毎日の積み重ねが大事そうやって海はきれいになってきた

「自分の知識や技術をこの事業所の仕事に活かしきることと、事故やトラブルを起こさないで毎日の業務をこなしていくということが一番大事な仕事だと考えています。」と語る所長。
その結果、お客さんや地域住民の方々の信頼を得るということにつながるのだとも話してくれました。
台風が近づけば、フェリーが止まる前に島に渡り泊まりがけで施設を守る。これまで工事発注していた活性炭の交換作業も自分たちで取り組みコスト削減を実現する。深さ6.5メートルもの水槽をたわしで手洗いする。こうした努力の積み重ねが島の美しい海を取り戻してきました。
「さすがに水槽手洗いは疲れます。真黒になりますし。でも次の日からまた水がきれいになって流れていくのを見ると満足感があります。やりがいありますね。」
そこは静かにそして絶え間なく、未来へ連れていく水を送り出している場所でした。